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Nhà Rôngと呼ばれるバナール族の超高床式木造建築

民族学博物館のRông

Nhà Rôngとは

この超高床式の茅葺き屋根の住宅に出会ったのは、ハノイの民俗学博物館でした。 大学時代に民家研究会に所属していた筆者は、岩手県の茅葺き屋根の梁の上に登って測量したのを思い出しました。 民俗学博物館の敷地内に展示されているRôngと言われる茅葺き屋根の住宅は、とにかく床が高い。 はしごのようなに細く垂直に近い傾斜の階段には、登るのに少し足がすくむ人もいるでしょう。 茅葺屋根のRôngは地域により様々デザインがあり装飾が違います。高いものでは18メートル(5階程)の高さの家もあるそうです。

民族学博物館のRông

民族学博物館のRông

Nhà rôngはバナール族(Người Ba Na) が使用する共同生活や集会所として建設されています。 バナール族はベトナムの少数民族ですが、22万人以上もいるベトナムでは比較的規模の大きい少数民族です。 主に中部高原(Tây Nguyên)のザライ省とコントゥム省に、一部は海岸沿いである南中部のビンディン省、フーイエン省にも住んでいます。 バナール族の言語はモン・クメール語族に属し、その言葉はベトナム語よりもカンボジアやタイの言葉に近いようです。

バナール族で有名な人といえばヤードー(Ya Đố)です。いっときですが、ベトナムを支配した西山(タイソン)グエン氏の妻ヤードーがバナール族でした。 16世紀末腐敗した広南グエン氏に対して、西山グエン氏が反旗を振り返し、バナール族もその軍に加わったと言われています。 広南グエン氏の本拠地フエを抑え、その後北上した西山グエン氏は、兄弟とともにベトナム南北を支配しました。 キングダムに例えると、秦国の王政が山の民の楊端和に援助を受けているような感じですね。楊端和と政は結婚しませんでしたが。 西山グエン氏の軍とバナール族という異民族同士が協力し合う様子は、秦の兵士と山の民をイメージするとリアリティを感じられます。 しかし結局、広南グエン氏の子孫であるグエンフックアインによって西山グエン氏は滅ぼされ、グエンフックアインはベトナム最後の王朝の初代皇帝ザーロン帝となります。 ※グエンフックアインはこのときフランスの援助を受け、これがフランスの植民地支配の足がかりにされました。

いまでは、少数民族となったバナール族ですが、それでも22万人以上いるので広い地域に分布して生活しています。ベトナム人に溶け込んで生活しているバナール族もいるでしょう。 しかし、ベトナム南部の平野地の暑い地域では、太くて真っ直ぐな木は育たず、建材に使える木はあまり手に入りません。この高床式木造建築が建てられるのは、中部高原ならではのすずしい気候と豊富な木材にあってこそです。

Nhà Rôngが見れる場所

Nhà Rôngは中部高原のヴァナキュラー建築ですが、ハノイなどでも観ることができます。

ベトナム民族学博物館 |Bảo tàng Dân tộc học Việt Nam

ハノイ市内にある民族学博物館の敷地内には、ベトナム少数民族の代表的な住宅が展示されています。 少数民族の建物としていちばん有名なこのNhà rôngもあります。ベトナム少数民族の住宅をまとまってみれる貴重な場所です。 ハノイへ訪れたらぜひ行ってみてください。

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ベトナム民族文化観光村| Làng Văn Hóa Du Lịch Dân Tộc Việt Nam

こちらもハノイにありますが、ハノイ中心部から45kmと離れた郊外にあります。 広い敷地内に、ベトナムの代表的な建築が立ち並ぶ建築村です。

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中部高原 | Tây Nguyên

バナール族が住む、ザライ省・コントゥム省には点在しています。 観光客向けの村もあり、ベトナムローカルツアーに参加すれば訪れることができます。

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光中博物館|Quang Trung Museum

光中博物館のNhà Rông

光中博物館のNhà Rông

光中帝と呼ばれたグエンフエの博物館です。
なぜかこちらにも展示されています。

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動画で観るNhà rông

 

筆者プロフィール:Koike Yusuke
木造建築士という建築知識をバックグラウンドに、ベトナム南部で家具のマーケティング・デザイン・商品開発をしています。ベトナム史が好きなので、ベトナム建築を古代から現代まで調べて、このブログで紹介しています。建築や家具、デザインはもちろん、ベトナム史やビジネスについて語り合える方募集しています。Twitterやインスタでお気軽にDMください。
資格:木造建築士 / カラーコーディネーター1級(商品色彩)
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