木造建築士学科試験 独学方法

足掛け3年がかりになりますが、海外在住の僕が木造建築士に独学で合格した方法を紹介します。
僕の本業は家具の設計です。現在、建築に関わる仕事はほぼしていません。ですので、実務経験による知識はほぼ無いといって良いです。
前職では建築に関わっていましたが、ここ数年はほとんど家具の仕事しかしていません。事前知識の乏しい状態で勉強を始めました。木造建築士をこれから独学で勉強される方には参考になると思います。
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Toggle木造建築士の受験資格はありますか?
「さぁ、木造建築士を取得しよう」
とおもっていきなりテキストを手にとるのも悪くないですが、勉強を始めるにあたって必要なものを確認していきましょう。
そもそも、あなたが本当に「木造建築士」を受験できる資格があるかどうか、まずこれを確認したほうがよいですね。
二級建築士試験・木造建築士試験 学歴(指定科目を修めて卒業)等 建築の実務経験年数(旧要件) 大学[旧制大学を含む] 0~2年以上[建築課程卒0年](土木課程卒:1年以上) 短期大学 0~2年以上[建築課程卒0年](土木課程卒:1年以上) 短期大学 0~2年以上[建築課程卒0年](土木課程卒:1年以上) 高等専門学校[旧制専門学校を含む] 0~2年以上[建築課程卒0年](土木課程卒:1年以上) 高等学校[旧制中学校を含む] 3~4年以上(建築課程卒3年以上)(土木課程卒3年以上) 建築に関する学歴なし 7年以上 その他都道府県知事が特に認める者[「知事が定める建築士法第15条第3号に該当する者の基準」に適合する者] 建築設備士 0年
木造建築士の受験資格は、2級建築士とほぼ同じですね。
そのわりに業務内容が制限されているので、木造建築士を受けるくらいなら2級建築士を目指す人が多いんですよ。
これを見ればわかりますが、木造建築士はかなりマイナーな資格です。
一級建築士:366,755人
二級建築士:761,558人
木造建築士: 17,825人
(平成29年4月1日現在)
あなたが、建築設計のお仕事をされているなら、2級建築士を目指した方が良いと思います。資格の取得者が少ないということは、「取得してもあまり意味が無い」と思われているからでしょう。
2級建築士と木造建築士試験の難易度を比較すると、木造建築士の方が出題範囲が狭い分難易度が低いです。2級建築士へ予備知識として勉強をはじめるにはいいですが、1級建築士を目指しているなら、木造建築士を合えて受ける必要はないでしょう。
まずは、木造建築士を取得する意味をもう一度よく考えてみて下さい。
僕も「2級建築士と木造建築士どちらを受けるか」ずっと悩んでいました。
ただ僕の場合は、本業が建築設計でないのと、海外在住ということで、出題範囲が狭く難易度が低い木造建築士を受けてみることにしました。
学科を真面目に勉強したのは約1年未満、設計製図を勉強したのは6ヶ月未満でした。
独学でも、しっかりした計画を立てて、1日1時間程度の勉強時間をあてれば合格できます。
木造建築士の試験スケジュール
3月 受験申込配布 3月末から4月上旬にかけて請求できます。受験申込はこちらから。
4月 受験申込 受験申込初回は、指定の会場にて受付となります。2回目以降はインターネットでの申込が可能となります。
7月 学科試験 試験は一級建築士の試験と同日同会場となっており、肩身の狭い思いをして受験することになります。
9月 合格発表 建築技術教育普及センターのホームページでも確認できます。
10月 設計製図試験 試験は一級建築士の試験と同日同会場となっており、肩身の狭い思いをして受験することになります。
12月 合格発表 建築技術教育普及センターのホームページでも確認できます。
受験初回の方は、3月になったら建築技術教育普及センターのホームページを度々確認するようにして、忘れずに受験申し込みを郵送してもらいましょう。
また、受験申込の受付期間が決まっていますので、その期間中に申込を完了しなければなりません。必要書類はなるべく早く用意してください。
おわかり方と思いますが、受験申込してから勉強をはじめても遅いです。
僕の経験を下記しますので、参考に学科試験の1年前くらいから試験に向けてのスケジュールを立ててみてください。
学科試験の勉強に必要な期間はどれくらい?
建築関連の仕事をされていて、建築の基礎知識がある方なら、6ヶ月間、1日1時間以上勉強続ければ十分です。
不安な方は、1年前から勉強をはじめても良いですが、あまり先が長いと中だるみしてやる気がなくなるので、7~8ヶ月前から計画的に勉強をはじめるのをおすすめします。
年明けてすぐ学科試験のへの勉強スタートするのが、キリも良いしモチベーションが上がりやすいかと思います。
構造や木造がまったくダメな方は、1年くらい前からこういう本を読みはじめて、少しでも苦手意識を取り除いておきましょう。
設計製図の練習に必要な期間はどれくらい?
本業で木造の建築設計製図をされている方なら、3ヶ月も練習すれば十分です。
木造に慣れていない方なら、6ヶ月前からボチボチはじめたらいいですね。
学科の勉強と並行して製図の練習をすると理解が深まります。
僕の場合、学科試験後に製図の練習をはじめたら、3ヶ月では合格が難しいのがわかったため、初年度の設計製図の受験は見送りました。
余談ですが、僕みたいな海外在住のクセに木造建築士を受験しようなんて人は、かなり少数派だと思います。海外から受験用の書類を手配するのは本当に手間がかかります。年に1回しか受験できないし、スケジュール調整も難しいです。あなたが本業で建築設計をされているなら、木造建築士なんて受けずに二級建築士か一級建築士を取得されるべきでしょう。
学科試験にむけて自分の実力を確認する
僕は、前職では6年間、商業建築の設計施工を行っていました。インテリアの設計施工がメインなので木造建築とはほぼ縁がなく、木造や構造の知識が乏しい状態で勉強をスタートさせています。唯一の得意分野は、色彩と内装工事でした。
工務店などで働いている大工さんよりも、明らかに木造の知識は少ない状態が出発点です。ほぼゼロの状態です。
あなたは、どうでしょうか?
たぶん、木造住宅のお仕事をされている方なら、僕よりもかなり出発点が先に行っているはずです。というか、僕ほど出発点が遠い人はなかなかいないと思うので、自信のない方でも僕の勉強の仕方を辿っていけば確実に合格できるはずです。
自分の実力を確かめる方法
いきなりですが、過去問にチャレンジしてみましょう。(過去問は木造建築士テキストの巻末にありますし、インターネットでダウンロードできます。)
木造建築士学科試験の合格点は、各分野25点中13点です。40%間違えても合格するので、決して高い基準点ではありません。
しかし、専門的な知識がないと、まったく解けない問題です。
勉強をはじめる前に、まずは過去問題を4分野全て解いてみましょう。その点数をみればあなたの実力がだいたいわかります。
7点以下 → 入門者。建築の基礎知識から身につけましょう。5点以下の人は1年程度の勉強期間が必要です。→木造建築士入門書をまとめました。
8~12点以下 → 基礎知識があるので、木造建築士テキストを繰り返し読んで、過去問題を何度も解きましょう。苦手分野を中心に勉強すれば7~8ヶ月で合格基準に達します。
13点以上 → 合格基準に達していますが、過去問題を20点以上とれるようになるまで、何度も過去問題を解き、わからないところはテキストで確認しましょう。6ヶ月前から設計製図と交互に勉強を続ければ、1年で学科と製図試験の合格が狙えます。
学科試験までのスケジュールを立てよう
スケジュール作成にあたっては、こちらの本が参考になります。
東大卒の筆者が、効率的な勉強法ホを解説しています。ピンポイントで出題範囲を絞っていく手法を理解できます。これを知っておかないと、勉強の効率が格段に悪くなります。
平日の勉強できる時間を洗い出そう
あなたは、一日何時間勉強をする時間にあてられますか?
一日のスケジュールを確認しながら、勉強する時間を絞り出しましょう。どんなに忙しくても、最低30分は勉強するクセをつけてください。できれば1日1時間以上継続するのがベストです。電車で移動している方なら、いまはスマホのアプリなどもあるので、移動時間を勉強に当てられます。
参考までに僕のスケジュールを記しておきます。
4:55 起床、勉強時間
5:55 朝食。
6:30 家出発 移動時間で勉強45分
16:40 会社出発 移動時間で勉強45分
17:30 妻の実家で夕食
18:00 帰宅 1~2時間家族団らんの時間
21:00 消灯 子供と嫁は就寝 僕はブログの更新や勉強など、寝るときもある
今はほぼ定時で帰れ、残業が少なくて家族との団欒時間があります。僕の勉強時間のメインは移動時間です。あとは、昼休みに勉強することもできます。
一番のオススメは朝イチの勉強です。「思考の整理学」という本にも書いてありますが、朝起きてすぐの時間は「ゴールデンタイム」です。頭が空っぽでスッキリした状態なので、勉強したことがどんどん頭に入ってきます。
思考の整理学 (ちくま文庫) 外山 滋比古 筑摩書房 1986-04-24
休日の半分は過去問題を説いて模擬テストしよう
試験問題は、1分野90分の時間があてられています。平日には、まとめて過去問題を解く時間がありません。
唯一まとまった時間がとれる休みのには、最低3時間は勉強してください。
わかってもわからなくても、時間を決めて過去問題にチャレンジして、90分以内に全部解けるようになるように繰り返す必要があります。時間配分を掴む練習にもなります。試験を意識して勉強に望まないと、休日は時間がある分ダラダラとした勉強になりがちです。
せっかくの休日は、自分で模擬テストする時間にしましょう。
平日 1時間 × 6日間 = 6時間
休日 2時間 × 1日 = 2時間
最低でも週に8時間の勉強時間を確保する必要があります。
僕が作った【長期計画表】と【勉強チェックリスト】を使用しながら、勉強を続ける方法を伝授します。
まずは、こちら↓をダウンロードして下さい
木造建築士 勉強計画
ここには僕のタイムスケジュールを記入してあるので、あなたのタイムスケジュールに合わせてアレンジして下さい。
長期計画表の使い方
1日のタイムスケジュールを決める
1日で勉強する時間を決めます。
僕は、家族に邪魔されない朝の時間30分。
それと、通勤時間の30分を学科の時間に当てました。
これで合計1時間、学科の勉強時間時間を確保。
あと、朝の20~30分はジョギングやスケッチ・製図などの時間に当てます。
これは、比較的不規則でしたが、運動すると脳の活性化につながるので、週に2~3日で良いのでジョギングや筋トレなどする時間に当てましょう。
僕のスケジュールを見て頂ければわかりますが、夜は勉強していません。
もちろん、朝時間確保するのが難しい方は、夜勉強する時間を当てても良いです。
僕の場合は家族がいるので、家族と過ごす時間を勉強に奪われたくなかったため、朝勉強するようにしていました。
土曜日か日曜日は2時間以上確保して過去問題を解く
土曜日か日曜日のどちらかは2時間以上勉強時間を確保しましょう。
それは、過去問題を解くためです。
過去問題は、平日勉強した内容が身についているかの確認と試験時間内に問題をとくトレーニングになります。
1科目90分過去問題を解き、30分答え合わせに当てます。
毎週1年度ずつ繰り返せば、1月で4年分の過去問題を実践できます。
中期計画について
僕の場合、1月~4月までは各科目1月ごとに勉強しました。
1月:計画
2月:法規
3月:構造
4月:施工
これは、必ずしもその通りやる必要はないです。
僕の勉強のペースがこの方がやりやすかっただけです。
5月に入ったら、2年度分くらいの過去問題を解いてみます。
苦手科目を把握して、5月は苦手科目を中心に勉強をします。
6月~7月も過去問題を繰り返し解きながら、試験に慣れて行きます。
試験前までには、各科目で20点くらい取れるようになっておきましょう。
勉強計画 チェック表の使い方
このチェック表は、一見したら1日のスケジュール帳のように見えますね。
実は逆で、1日の勉強時間を可視化するための表です。
1日に勉強やその他自己投資になるアクティビティ(運動・スケッチ・製図・読書)などを行った内容を記録します。
この表を毎日付け続けることで、モチベーションを保つことができます。
空欄が多ければ、自分がサボっている事がわかりますし、空欄が少なければ、勉強が続いていることを把握できるので、自信へ繋がります。
このチェック表を記入し続ける習慣は非常に重要です。
「自分はこれだけ勉強したんだから大丈夫だ」
試験中にパニックにならないために、自信をもって安定した精神状態で試験に望むことができます。
このチェック表を使わなくても、手帳などに勉強時間と勉強内容を記入して、自分の行動を記録する方法でも構いません。
大事なのは、自分の努力を可視化し自信を持つことです。
一度試験会場へ行っておこう
木造建築士の試験は、受験者数が少ないので、一級建築士の試験と同日・同会場で行われます。
試験会場は、高校や大学のキャンパス内です。
都心なら電車で徒歩で行けますが、地域によってはバスでの移動となります。
今の時代は、スマホがあればだいたいの移動時間がわかりますが、一度会場へ行っておくと当日の朝のタイムスケジュールを決めやすくなります。
また、必要であれば当日の朝に朝食を取る場所や、早めについて勉強する場所の目星をつけることができます。
何より、一度会場へ行っておけば、当日の不安要素の一つが解消できます。
試験前の夜よく寝るために
とあるオリンピック選手は、試合の二日前夜中の2時過ぎまで麻雀をしていたそうです。
実は、その前の大会で、本番前日によく睡眠がとれず、万全の体調で本番に望めませんでした。
試験など大事な日の前日、緊張や考え過ぎてしまいなかなか眠れない。
早く寝て翌日早起きしよう、と思って早めに就寝しても、結局寝たのは12時過ぎとか。
誰もが経験したことがあるはずです。
では、試験前日よく眠るためにどうしたらよいのか。
前日、寝不足でいることです。
睡眠時間を2~3時間しかとっていなければ、試験前日の夜、嫌でも眠くなって早く寝てしまいます。
夜中までの麻雀はオススメしませんが、二日前の夜は遅くまで苦手分野の勉強をして起きていましょう。
試験の前日は、試験当日いかに体調良く望めるかを第一にしてください。前日は、勉強しなくてもよいくらいです。
学科試験前日に確認すべきこと
携帯品の確認
試験へ望む携帯品を確認しておきましょう。
試験当日、本人確認をする場合がありますので、身分証明書(原則として、顔写真付きのもので、運転免許証、パスポート、社員証、学生証等)を持参して下さい。
a 必ず携行するもの
受験票、黒鉛筆(HB又はB程度、シャープペンシルを含む。)、消しゴムb 携行できるもの
法令集〔学科II(建築法規)の問題を解答する場合に限り、原則として、1冊使用できます。ただし、本編に付随する告示編等がある場合は1セットとして使用を認め、認められる法令集は、見出し、脚注等の簡単な書込み及び印刷以外に解説等がなく、かつ、条文の順序の入替等のないものです。また、法令集への書込みは【建築士試験の「学科の試験」において使用が認められる法令集について】(PDF:181KB)を参照のうえ、紛らわしいものとならない、または、過剰なものとならないよう注意して下さい。〕、鉛筆ケズリ
c 携行できないもの
電卓、計算尺、計算機能のあるもの、電動消しゴム、その他、上記a、b以外のもの
筆記用具は、「鉛筆2本・シャーペン1本・消しゴム」最低限用意しましょう。
マークシートは、鉛筆のほうがマークしやすので、鉛筆をメイン使用すればよいですが、万一鉛筆の芯が折れたときを考えて、シャーペンがあると安心です。
筆記用具は高価なものではないので、ケチらずになるべくよいメーカーのもので揃えた方が良いでしょう。
会場までのアクセス
事前に会場へ行かれていない方は、移動時間をよく調べておきましょう。
駅から会場が近い場合は、日建学院とかの営業が道沿いにいるので、その道に沿っていけば会場にたどり着きますが、バスの移動がある場合は時刻表もチェックしてくださいね。
学科試験当日に確認すべきこと
早起きしましょう(笑
大事なのは睡眠時間で、7~8時間確保しましょう。
もちろん、試験には間に合うように出発してください。
試験会場には何時に着くのがベストか?
平成30年の試験開始時刻は9:45ですが、試験会場に入れるのはだいたい9時からです。
会場が大学の場合、キャンパス内には先の時間から入れますが、試験会場の入り口が開くまでは外で待つことになります。
木造建築士受験生にとって、気分の悪いことは、この会場に来ているほとんどの受験者が一級建築士の試験だということです。
彼らとあまり会いたくないなら、会場へは早く着きすぎないことです。
1時間前着を目安に出かける人が多いと思いますが、開場時刻の9時を目途にするのが良いでしょう。
落ち着いて試験に臨もう
木造建築士学科の試験時間は長いです。
午前:計画と法規合わせて3時間
午後:構造と施工合わせて3時間
しっかりと勉強してきた方なら、結構余裕のある時間設定です。
時間配分を気にするのも大事ですが、焦らずに確実に試験を解いてゆきましょう。
僕の場合は、試験終了30分くらい前に終わって、会場をでました。
なお、試験終了前に会場を出てしまうと問題を持って帰れません。
試験問題を持ち帰りたい方は、試験終了まで待ちましょう。
最後に
学科の試験が終わっても、製図の試験が残っています。
ここで気を抜かずに、翌日からは製図の試験に力をいれてください。
木造建築士 入門書
木造建築士の資格試験まで1年以上あって、基礎知識に不安がある方は、本格的にテキストを読みはじめる前に、建築の基礎知識を身につけておきましょう。基礎知識がない状態だとテキストを読んでも意味がわかりません。
ある程度、基礎知識をつけてから木造建築士のテキストへ入って行きましょう。もちろん、入門書と併用しながら木造建築士テキストを進めてもよいです。
木造建築士と二級建築士を目指している方向け 入門書
About
筆者プロフィール:Koike Yusuke(デザイナー&マーケター)
木造建築士という建築知識をバックグラウンドに、ベトナム南部で家具のマーケティング・デザイン・商品開発をしています。ベトナム史が好きなので、ベトナム建築を古代から現代まで調べてます。建築や家具、デザイン、マーケティングはもちろん、ベトナム史やビジネスについて当ブログにまとめています。また、これらのテーマについて前向きに語り合える方募集しています。Twitterやインスタでお気軽にDMください。
資格:木造建築士 / カラーコーディネーター1級(商品色彩)
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- 投稿者: Koike Yusuke
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