身近な素材と意外な発想で作られた ユニークなベトナムの家5選
建築基準法がゆるいベトナムでは、日本では考えられないようなアイディアで建てられた住宅が見られます。
ペットボトルで建てられた家、ブラウン管テレビやI-Phoneを塀に使ってみたり。
そもそも、燃えやすい藁葺屋根なんて日本で街なかに建てることは許可されるわけがありません。
今回は、身近な素材と意外な発想で建てられた住宅を5つ紹介します。
ハノイ市 8800本のペットボトルで建てられた家|Nông trại hữu cơ Tuệ Viên
8800本のペットボトルで建てられた家 pic.twitter.com/fVSRTySP2l
— ベトナム建築MAP (@vn_design_to) September 16, 2021
壁の中に8800本のペットボトルを埋め込んで建てられた家です。
4隅の柱だけは、構造体として煉瓦が使われています。この家は、ハノイ市ロンビエンの有機栽培のファームにあるそうです。
ブルーのペットボトルを利用した富士山型の透かし壁がアクセントになっています。
いままで、I-Phoneのバックパネルを使用した塀、ブラウン管TVの塀などを紹介してきましたが、アイディアはよくてもデザインされておらず雑な仕上がりでした。
それに比べてこのペットボトルの家は、ペットボトルの特徴を活かしたデザインも効いています。
耐久性に不安がありますが、ペットボトルの新しい再利用の仕方としては面白い提案だと思います。
フーコックのナム・ジュン・パイク?古いブラウン管テレビケースで造った塀
中古のブラウン管TVを再利用してつくった塀 pic.twitter.com/NKBxBd0bBV
— ベトナム建築MAP (@vn_design_to) August 11, 2021
ブラウン管テレビが並ぶ姿は、ナム・ジュン・パイクのビデオアートを連想させます。
※ブラウン管テレビは、LEDが普及する前2000年代頃まで製造されていた箱型のテレビです。
2005年フーコックに住む男性は、息子が働く電化製品の修理工場から廃棄されるブラウン管テレビケースを引取り、塀の造作をはじめました。2010年、5年の歳月を経て、400台のテレビケースを使用して5段積みのテレビ塀を完成させました。
当の本人は、ナム・ジュン・パイクに影響されたというわけではなく、ブラウン管テレビケースを廃棄するよりも有効利用したいという考えて思いついたようです。
i-Phoneのバックパネルをタイル代わりに使用した塀
ベトナムのTikTok で話題になっているiPhoneカバーをタイル代わりに使用した塀
発想が面白いhttps://t.co/9gh8ZZcY00 pic.twitter.com/dQyx7ovvpN
— Koike Yusuke (@yusukekoike21) June 16, 2020
Tik tokで話題になり、ベトナムのニュースで取り上げられたiPhoneタイルの塀です。
iPhoneをタイル代わりにするのは、ホーチミン市で携帯電話の販売をしている親戚が、大量のバックパネルを仕入れてきて、石工職人を雇い、このiphoneの塀を作ったそうです。
塀を作るのにかかった費用は2億VND(約93万円)で、いろんなパターンでiphoneのバックパネルが埋められています。
使用されたのは主にiPhone5、5C、6、6S、7、7+、8、8+、一部iPadのものも使用されているそうです。
このニュースを見て思ったのは、2つ
☑とてもいい発想(アイディア)
☑でももったいない
もともと、外壁や床などにタイルを頻繁に使用するベトナムらしく、iphoneのバックパネルを装飾として、塀に埋め込むのは素晴らしいアイディアだと思いました。
この発送は、iPhoneのバックパネルだけでなく、他家電の装飾的パネルの再利用の可能性を示してくれました。
ただ、残念というかもったいない、のはデザインがされていないことです。
パターン張りをしてあり、一応デザインはされているのですが、ちゃんとしたデザイナーがデザインすれば、特に色のバランスを考えればもっと見栄えする塀になったはずです。
まぁ、他人の家の装飾なので、余計なお世話ですね。
ベトナムのニュースでは場所まで特定されていましたが、個人宅なのでこのサイトでは地図の表示は控えておきます。
幻の燃えさかる花の家
オレンジ色の花で屋根が覆われた、おとぎ話に出てきそうなとてもメルヘンな家。
これは、ラムドン省にあったとある民家です。家主が屋根に登り、一生懸命土を盛り、育てた花を咲かせたそうです。
しかし、いまではこの家にこの花はありません。
オンラインニュースをみたハノイの顧客に、屋根の花全部を合わせて1600万ドンで売ってしまったそうです。
実はこの花の家は、SNSで大きな話題になり、アメリカでもニュースになったほどだとか。
この家の前で自撮りするために、遠くからやって来る人達がたくさんいたそうです。
花の家の家主は、それが嫌になってしまったのかもしれません。
ちなみに、この花はベトナム語で「hoa xác pháo=爆竹の花」や「hoa chùm ớt=唐辛子の花」と呼ばれます。確かに鮮やかな見た目は火花のようにも唐辛子のようにも見えます。
Googleで調べたところ、「Xác pháo=サルビア」と検索に出てきました
しかし、Twitter で「サルビアではなくカエンカズラではないか」とご指摘頂きました。
色的にやはりカエンカズラの可能性が高いですね。
屋根いっぱいのカエンカズラの花を育てるには、それだけ土を盛らなければなりません。おそらく、大変な作業だったはず。
カエンカズラは蔓性の植物だけに壁面まで花が垂れたため、壁の半分以上が花が覆われていました。ここまで花で覆われると全然違う家に見えますね。
ところで、この花屋根の写真をみたとき、すぐに藤森照信を思い浮かべました。
屋根に草といえば、日本人では藤森照信が第一人者ですが、この家主は藤森照信氏のことなんて全く知らなかったはずです。
筆者も引退したら小さい小屋を建てて、カエンカズラの屋根の家を作ってみたいなぁ、と思いました。
コンクリートの壁に藁葺き屋根をのせたオーガニックな住宅
ここまでは、住民が自分のアイディアでいわゆるDIYして、改築した家を紹介してきました。
最後に紹介するのは、ベトナム人建築家により設計された住宅です。
コンクリートの上に茅葺き屋根をのせた住宅。妙にマッチしているのは、グリーンの効果かと。 屋上に野菜庭園をつくるためにこうなったそうです。
とてもオーガニックな住宅です。
設計はベトナム人建築家Nguyễn Văn Chương
都会に住みながらも田舎にいるような空間を再現できました。
ちなみに1階のインテリアはモダンな雰囲気です。
筆者プロフィール:Koike Yusuke(デザイナー&マーケター)
木造建築士という建築知識をバックグラウンドに、ベトナム南部で家具のマーケティング・デザイン・商品開発をしています。ベトナム史が好きなので、ベトナム建築を古代から現代まで調べて、このブログで紹介しています。建築や家具、デザインはもちろん、ベトナム史やビジネスについて語り合える方募集しています。Twitterやインスタでお気軽にDMください。
資格:木造建築士 / カラーコーディネーター1級(商品色彩)
Twitter @yusukekoike21
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メール:amplestyle108★gmail.com(★を@に変換)
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