家具デザイナーの資質とポジションニングについて

Chairs

家具デザイナーになるのには、才能がいるのでしょうか。

もちろん、資質や才能・センスといったものが他人より飛び抜けていれば、デザイナーになれると思います。
しかしデザイナーを目指して、美大や専門学校へ入ったはいいけど、周りには自分より才能がありそうな人ばかり・・・、自分やばくない?って感じたことありませんか。
美大には各校の美術が得意だった人が集まるんだから、そりゃそうですよね。高校までは、自分は美的センスがあり絵を描くことが他人より優れていたと思っていたのが、美大へ進むと逆転します。自信崩壊です。
だけど、美大に入れた時点であなたのセンスは十分にあります。課題をこなしていれば、他の人だって同じような気持ちであなたを見ていることでしょう。

そもそも他人と比べてもロクなことないので、そんなことはあまり気にしない方がよいです。それよりは自分がデザインとどう向き合うかが大事です。

しかも、デザイナーという職業は、美的センスや才能だけで成立つ職業ではありません。
センス以外の能力も必要ですので、それについてこの記事で説明していきたいと思います。

デザイナーにセンスは必要か

「センスが良い人ほど、デザイナーに向いている」と言って差し支えないと思います。
かといって、「自分にはセンスがないからデザイナーにはなれない」と考えてしまうのは間違っています。特に、「誰々よりセンスない・・・」なんて他人と比較するのは論外です。

センスは磨くことができるし、デザインはセンスだけで行うものではありません。
家具デザイナーは、デザインによって顧客の問題解決を図ることが仕事です。単にセンスが良ければいいものではなく、顧客とマーケットの需要をマッチングするのもデザイナーの役割です。
それに、センスは先天性もありますが、後から磨くことができる後天性のセンスもあります。

センスを磨くには美しい環境の必要性

なるべく、美しいものに囲まれた環境で過ごすと自然と美的センスが磨かれます。もちろん意識的に美しいものを周りに揃えていかなければなりません。
育った家のインテリアや地元の自然環境なども美的感覚に影響しています。
だから、金銭的に豊かな家や北海道などの美しい自然に囲まれて育った人は、美的感覚が良い傾向があります。
そういった美しい環境で育った方は、周りが美しくないと違和感を感じてしまうはず。
そして違和感を感じるようになったら、「あれをこうしたらもっと美しくなる」と常に環境をみながら考えるんです。そうすると自然と美に対してこだわりが強くなり、センスのいいものを作れるようになります。

家具をデザインするなら、一つでも良いから奮発して本物の家具、美しい家具を購入して近くに置くと良いです。

本物の美しい家具

といえば、やはり北欧の巨匠が作った椅子が良いでしょう。
そして「美しい椅子」を作った巨匠たちを観察することで、家具デザイナーの資質が見えてきます。

美しい椅子

美しい椅子 : 北欧4人の名匠のデザイン【電子書籍】[ 島崎信 ]

この著書は、4人の北欧デザイナーの「美しい椅子」を写真付きで解説しています。専門家だけでなくて一般の椅子好き、インテリア好きにもわかりやすい著書になっています。
4人の北欧デザイナーとは、

・ハンス・ウェグナー
・フィン・ユール
・ボーエ・モーエンセン
・アルネ・ヤコブセン  

実際に、現代デザインされている椅子は、この4人の巨匠たちの椅子からヒントを得て、悪言い方をすると焼き増し(コピー)して、椅子のデザインをされています。
現代新作の椅子を見ても、
「お、これはウェグナーの遺伝子があるな」とか「これはフィン・ユール風だな」と思うことは多いです。
巨匠のデザインした椅子のディテールは多くのデザイナーに研究されて、そのテクニックを使って現在の椅子デザインにも再現されているのです。

デザイナーの資質とは

島崎信氏著書「美しい椅子」の最後に「デザイナーの資質とは?」という記事があります。
読み飛ばしがちな記事ですが、この記事の内容は、本質をついているのでデザイナー を目指す方は1読だけでなく、2読も3読もすべきだし、この記事の意味を理解してもらえればと思います。
この記事から大事な部分を抜粋して紹介します。

デザイナーとして開花するためには、「経験」「個性」「蓄積」の三つを作り上げて いくことに尽きるだろう。
「経験」とは、多くの仕事を通じてデザインカを磨くこ と。
「個性」とは、自分のカラーを創り出すこと。それは自然に生まれることではなく、自らが認識した積み重ねの上から創りあげていくもの。そしてそれをいかに「蓄 積」していくかが鍵となる。
この三つは、人から与えられるものではなく、自らつくっていくものである。

島崎氏は「経験」と「個性」と「蓄積」が大事と言います。
ここからは僕の考えですが、経験の初期段階では「コピーする」ことも大事だと思っています。美しい椅子を作ったデザイナーの作品を模倣することは彼らに近づく近道です。 初期の過程においては巨匠のデザインを模倣して、デザインの本質を理解することに徹します。
そして、最終的には「独自の世界観をつくりあげること」でオリジナルのデザイナーになることを目指せばよいです。常に段階的変わっていけばいいわけで、いきなりトップで活躍できるのは、圧倒的に他人よりも才能とセンスがある人だけです。
自分に自信がない方は、「コピー」からはじめてみてください。

島崎氏の言う、「個性」とは自分のカラーを創り出す、というのは次の段階でよいのです。いきなり独自性を出そうとして迷走している方を見かけます。独自性は、経験の蓄積の上に成立つものです。
「独自の世界観を作り上げること」は、自分の思考の形成が必要です。

自分なりの価値観を持ってデザインすることで、あなたにしかできない表現ができるようになります。
ただ、独自性があっても、市場に需要がなければ仕事になりませんので、家具業界でのポジショニングについては後ほど説明します。

軽視しがちな経済的問題

経済的な問題をクリアするのはもちろんのこと、造形の力と知識を重ねる努力を続けなければ、デザイナーとしての才能が開花することはありえない

「経済的な問題をクリアするのはもちろんのこと」 とありますが、これが結構重要です。

デザイナーは、画家と同じように趣味の延長上の世界と捉えられがちです。実際に、デザインに没頭している時間は楽しいです。
しかし、答えが一つではない世界なので、結果を出さないと評価されません。ですから、結果を出すまでの収入は乏しく、収入が少ないため元々経済基盤のない人は、好きでも続けられなくなります。 親の家業がデザイナーや建築家なら、比較的理解も得やすく、フォローもしてくれますが。
しかし、そのバックアップがない人は、自分で経済的な基盤を作るしかありません。

それは、デザインとは別の思考回路と思われがちですが、ストーリーを作ることは同じで、むしろデザイン思考を持った人のほうが、経済的な基盤を生み出す要素は持ち合わせているはずです。
お金に興味のないデザイナーの方は、是非お金の勉強をしてください。
キャッシュフローや資産形成の参考図書としては、有名なこちら↓の著書がおすすめです。

改訂版 金持ち父さん 貧乏父さん:アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学 (単行本)

「好き」や「趣味」を仕事にできるか

四人はみな、建築や椅子が何よりも好きだった。頭の中でそれらのデザインを組み立てたり、実際に手を動かして図面や模型をつくったり、そういったことをやっているだけで幸せであり、他のことは一切見向きもしないで、そのために必要な知識を吸収する努力をしていった。

ホリエモンは、「好きなことを徹底して続ければ仕事になる」という主張をしていますが、それの典型例ですね。
しかし、時代に合っていなければ仕事にならないので、「モダンデザイン黎明期の北欧デザイナーと同じことをしていればいい」という話でもないです。

正直言って、日本国内での家具デザイナー自体は需要が減っているし、大御所デザイナーが幅をきかせています。
ですから、これからデザイナーで食っていこうとするなら、彼らとは違う個性を売り出す必要があります。

例えば、

☑人間工学を徹底的に勉強して、座り心地に特化した椅子を作る
☑モダンデザインは飽和しているので、逆にイギリス家具の装飾を勉強して、デザイン に活かす

奇をてらうわけではなく、家具デザイナーとして業界内でどのようなポジションを目指すか、ということです。
「最低限の知識と経験の蓄積」のあと、ある程度の段階に来たら「個性=独自の世界観」を作り上げていく段階的な戦略が必要です。
じゃあどのようなポジションを目指したら良いか、について説明しています。

100人の1人になろう!

この本、キングコング西野さんの「魔法のコンパス」に紹介されています。キンコン西野さんが取り上げていた内容は、一つの分野で「100人の1人」になろうということ。

2つの分野で「100人の1人」になれば
「100×100=10,000人の1人」のレアになれる。
さらに、もう1つの分野で「100人の1人」になれば、
「100×100×100=100万人の1人」になり、かなりのレアキャラ、オリンピックのメダリスト並みの希少価値になれる。

自分に落とし込んでみれば、
「家具・インテリアの分野で100人の1人」
「ブログの分野で100人の1人」
「ベトナムの分野で100人の1人」

家具・インテリア×ブログ×ベトナム=1/100×1/100×1/100=100万人の1

といったところでしょうか。
実際には、現在は下記の掛け合わせで、希少価値を発揮できそうです。

僕は、建築×ブログ×ベトナムで掛けて、「ベトナム建築マップ」というブログを運営しています。最近は、ブログよりもTwitterの方が反応が良いので、Twitterフォローしてもらえればと思います。

家具デザイナーとしての4つの生き方

本書「必ず食える1%の人になる方法」では、4つの生き方を示しています。
4章からなり、各章で下記4タイプで100人の1人を目指すための7つの条件が説明されています。

 

A.経済的価値を重視する「権力(サラリーマン)志向」の社長タイプ。

 会社というピラミッド型組織の頂点を目指す

B.経済的価値を重視する「プロ(独立)志向」の自営業タイプ

 会社という組織で自分の技を磨き、将来的に独立する

C.経済以外の価値を重視する「権力(サラリーマン)志向」の公務員タイプ

 会社以外の活動に自分の生きがいを求める人

D.経済以外の価値を重視する「プロ(独立)志向」の研究者タイプ

 自分の好きなことをして生きる人


あなたは、どのタイプに当てはまりますか?
詳しい説明は、本書をお読みください。

誰のためにデザインをしたい?

時間がある方は、⬇️をクリックしてクラウン野田さんの動画をご覧ください
[インテリア Vlog] 野田は今日も考える 「誰のためのデザイン?」

家具デザイナーを目指すなら、誰のためにデザインをするのか、ということだけははっきりしておきたいですね。
もちろん、家具を使用する方(消費者)のために、デザイナーは家具をデザインするべきです。
しかし、この焦点をずれているデザイナーがいます。なぜその焦点がずれてしまうのでしょうか?

それは、自分の作品を作ろうとしてしまうからです。
僕も外部デザイナーと付き合いがありますが、外部デザイナーに対して社内から批判が出やすいのその点です。

「家具を使用する人のことを考える」
というと、いかにいいものを作るか、と考えがちです。
しかし、消費者はそこまでしなくてもいいから、もっと安くしてほしい、という気持ちもあるんです。誰もが家具が好きなわけでもないんです。
☑とりあえず壊れなければ安いほうがいい
☑変なものは買いたくないけどこだわりの高い家具は必要ない。
☑家具にお金をかけるよりは他のものにお金を使いたい
いくらデザインが良い10万円の椅子をほしいと思っても、それを買える客層は限られています。
似たもので1万円の椅子でいいや、と考える消費者が多いのが現実です。

だけど、安ければ何でも売れるわけじゃないです。
顧客の好みや需要は常に変化しています。
マーケットやトレンドを常にチェックして、変化に対応する能力も家具デザイナーには必要となります。
さらに最近では、AIによるデザインも始まっています。

ここまでいろいろと書いてきましたが、これからの家具デザイナーに本当に必要なのは「マーケティング」能力なんです。
もちろんデザインは良くて当たり前です。センスは磨くべきなんです。
だけど、マーケットに合わないデザインしていたら、売れる家具はできません。


家具デザイナーを目指している方は、マーケティングの勉強をはじめることを薦めています。

マーケティング検定という資格試験もあるので、試しに勉強してみてはいかがでしょうか。

そこまでするのは面倒な方は、上に紹介した野田さんのYoutubeをご覧になると、家具業界の理解が深まります。
結構大事な話をされていますが、視聴者がそれほど多くないので、観ているだけでも他人との差別化は図れますよ
。空き時間に少しずつ視聴してみてください。

About

Koike Yusuke(Twitter@yusukekoike21
構造美主義者の椅子設計士/木造建築士/ベトナム建築探偵/デザイナー/500人規模の家具工場にて開発設計責任者。ベトナムで良い椅子を手頃な価格でたくさん作り、日本の家庭に届ける仕事してます。
資格:木造建築士 / カラーコーディネーター1級(商品色彩)

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