【レビュー】人工知能は人間を超えるか～ディープラーニングの先にあるもの～

人工知能はまだできていない

人工知能のことはAIと呼ばれていて、世の中にはAI搭載のシステムや商品が出てきています。
が、著者によると厳密な意味でのAI（人工知能）は、まだできていない。

著者、松尾豊氏（@ymatsuo）は現代の人工知能研究の第一人者です。
松尾氏による人工知能とは、「人工的につくられた人間のような知能」

とはいえ、最近では人工知能とプロ将棋士との対戦で、人工知能が勝ったりしています。
「もうすでに人工知能は人間より勝るではないか？」
と思う方もいるでしょうが、それはチェスや将棋・囲碁など限られたルールの中でのことであり、人間のように考えて創作できる人工知能はつくられていません。
どういうことかというと、いまの人工知能は、人間がルールや基準を教えてあげないと学習できない知能です。

人工知能を驚異的にみられている原因は、シンギュラリティ（技術的特異点）があるからです。
これは、人工知能が十分に賢くなって、自分自身よりも賢い人工知能を作れるようになった瞬間に訪れます。
１に0.9を無限に掛けていくと、0に近づいてい行きます。
逆に、1に1.1を無限に掛けていくと、無限の数字となります。
人工知能が爆発的に進化する瞬間です。
人工知能が自分よりも賢い人工知能を作り始めた瞬間こそ、すべてがかわる「特異点」です。
実業家のレイ・カーツワイル氏は、その技術的特異点が、2045年という近未来であると主張しています。

現在ある人工知能は、決められたルール内の中で、時には人間以上に賢く判断できる知能です。
人間の持っている多様性はそれほど広いということです。
しかし、その人間の多様性を理解できる可能性が生まれてきました。
それが、本書で取り上げられているディープラーニング（特徴表現学習）といわれるものです。

AI悲観論　機械が奪う職業ランキング

機械が奪う職業ランキング（米国）の上位15位を抜粋。

1. 小売店販売員
2. 会計士
3. 一番事務員
4. セールスマン
5. 一般秘書
6. 飲食カウンター接客係
7. 商店レジ打ち係や切符販売員
8. 箱詰め積み降ろしなどの作業員
9. 帳簿係などの金融取引記録保全員
10. 大型トラック・ローリー車の運転手
11. コールセンター案内係
12. 乗用車・タクシー・バンの運転手
13. 中央官庁職員など上級公務員
14. 調理人（料理人の下で働く人）
15. ビル管理人

引用：ダイヤモンドオンライン

数年前から、AI悲観論という話を聞くようになりました。
機械によって我々の仕事が取って代わられる・・・という話です。
ですが、現在の日本はむしろ人材不足の状況で、外国人研修制度などを利用して労働者を外国から呼び寄せている状況です。
なので、機械に仕事を奪われること悲観するのは早々のような気もしますし、むしろ機械が仕事をしてくれた方が、人手不足の解消にも繋がります。

わかりやすいのが、自動運転の技術ですね。
日本では自動運転タクシーの試運転が始まったようです。

自動運転タクシーの実証実験が始まったんですね。 https://t.co/nnHGAaFBL4

— ꀘꉻ꒐ꀘꏂ ꐞꀎꑄꀎꀘꏂ (@yusukekoike21) November 7, 2020

コンビニなどでは無人のレジが採用されたりも始まっています。
そのうちコールセンターもAIがこなすようになるのでしょう。

さて、家具業界について考えてみると、
1位の小売店販売員
が該当しています。

確かにニトリのようにほぼ接客しない家具店では無人化も必要かもしれません。
しかし、人は人が対応してくれないと、寂しく感じるものです。
そこで、小さな小売店では、接客やサービスを付加価値とすることがウリにできる日がくるかもしれませんね。

人工知能の浸透

10～15年ほどすると人工知能がインフラとして機能してきます。
生産現場などでは、ルーティーンワークとして、人間の代わりに「センサー＋人工知能（＋ロボット）」が作業をするようになります。
「なにかおかしい」ことが発生したときだけ人間が対応するようになります。

「商品の数を数える」
「売り上げをまとめてエクセルを作る」
「定期的に顧客にメールを送る」
といった大半の仕事は人工知能がやってくれる可能性があるそうです。

デザインや提案書を作製するなど、クリエイティブな仕事は人間の役割です。
と思いきや、そんなことも人工知能がカバーできる領域となる可能性もあります。
それが、上記のディープラーニングによる成果です。

著書の読み方

著書はAI初心者向けに書かれており、非常に読みやすい構成になっています。
一番重要なポイントがディープラーニング（特徴表現学習）を理解することです。
わかりやすく説明してくれていますが、それでもITやAIと無縁な人間にとっては理解しづらい部分もあります。
ですので、2回読むことを推奨します。
まず一回読むとディープラーニングの全体像がなんとなくわかります。そして2回目に読むと、前半から意味不明だった部分が理解しやすくなります。
今後、AIやIotは更に普及していくことでしょう。

Twitterで松尾豊氏（@ymatsuo）のフォローをオススメします。
最後に、最近の松尾氏の対談を引用しておきます。

松尾：本当です。あっという間ですよ。例えば、Courseraのディープラーニングのコースで勉強したら数週間でベーシックな能力は身につきます。実は、世界中の人がそうやって勉強しているのです。

私の研究室もディープラーニング講義など開催していますが、あれも英語圏だと通用しません。日本語圏のレベルが低すぎるので、当たり前のことを当たり前に提供するだけで、「すごい」と言われる。嬉しいけど悲しい、そんな複雑な感情ですね。

でも、1990年代後半にインターネットが次の時代のイノベーションだと信じて実行していた人々が、今の日本のインターネット産業の中心にいるように、私の研究室も10〜20年後に「ここからたくさんのものが生まれた」と言われるように、今頑張っています。

引用：マッキンゼーいくくらいなら、AI学んで起業せよ～「外コン・外銀志望者もAI勉強すれば半年でトップレベルに」【東大・松尾豊氏×外資就活・音成 スペシャル対談（下）】