日本人のこころを癒やす木の色 茶色の特色

日本で木造住宅が普及した理由

日本の戸建て住宅は、木造が圧倒的に多く、日本人は当たり前のように木造住宅に住んでいる。
しかし世界の住宅を見渡すと木造住宅に暮らす国民は少ない。木造住宅は、気密性が低く、構造体としても弱いため、海外では木造の住宅は一般的ではなく、組積造の住宅の方が普及している。木が使われているように見えても、構造体としてではなくて、意匠・装飾として使われていたりする。
一つは材料の問題がある。木造住宅を作るには、まっすぐと立った杉やヒノキのような針葉樹が必要。
日本は針葉樹が豊富で安価、しかも廃棄にもローコストのため、鉄筋コンクリート造で住宅を作るよりも安く住宅が建てられる。

針葉樹林

針葉樹林

日本以外でもヨーロッパや北米のように針葉樹の産地では、ツーバイフォーといわれる木造住宅が発展してきた。

一方で家具に使われる木材は、広葉樹が多い。家具では一般的なビーチやオークは広葉樹だ。
広葉樹はこのように、曲がりながら伸びているので、真っ直ぐな材が取りづらく木造住宅のに適していない。
しかし、比重が高く木目がキレイなため、ブナ(ビーチ)やナラ(オーク)などの広葉樹は、家具にはふさわしい木材でもある。

広葉樹林(ブナの木)

広葉樹林(ブナの木)

日本人の心を癒やす純和室の色構成

残念なことに、最近では和室のある住宅が減りつつあるが、和室には心を癒やす効果がある。
和室に入って、「ホッとする」って感じたことないだろうか?
和室は天然素材の色、いわゆるアースカラーやナチュラルカラーでまとまった空間構成になっている。
生成り(ベージュ)・茶色(ブラウン)・緑(グリーン)はこころを癒やす色だという。

住まいの壁面は床面のほぼ3倍の面積だが、
「大きい面積にはもっとも弱い色を使うこと!」
という原則がある。

つまり、ベージュ・ブラウン・グリーンの中で一番重い色であるブラウンを壁面に使ってしまうと、圧迫感のある空間になってしまう。
だから、ベージュの割合が多くなるような配色で空間を構成する。
和室の視空間を70%を占める面積は、壁面・障子・襖・畳そして日本人の肌の色も含めて白~生成りがベーシックカラー。
サブカラーとして、柱・梁・鴨居など杉や檜を使った茶色、アクセントカラーとしては、庭や生花が緑となる。

木が室内に与える効果

檜や杉といった木材は、細胞で出来ている生物質。
水との親和性が大きく、外気の温湿度によって、細胞膜はある一定の水分を保つ。(平衡含水率)
いわゆる、木が室内の湿度を調整する調湿効果があるため、快適な空間にしてくれる。
しかし、細胞膜の吸湿力にも限度があって、木材の繊維飽和点は約28%くらいで、梅雨時のじめじめはこの数値に近くなる。この時期だけは、除湿・換気が必要になる。

鉄筋コンクリートの集合住宅に住んでも木が必要な日本人

海外で暮らしてみるとわかるけど、鉄筋コンクリート造の家の床に木製フローリングで仕上げる国は少ない。
鉄筋コンクリート造であれば、タイルや石で仕上げて、カーペットを敷く。
地域によっては、床材に使うほどフローリングが手に入らない国もあるし、流通が確立されていない国ほど、地産地消でその土地にある素材で仕上げることになる。

日本は、国土の70%が森林という、木に恵まれた国。
しかし、残念ながら、針葉樹は比重が低く、表面が柔らかいため、床材や家具には適していない。
床材には表面が硬い広葉樹が使われるのだが、日本での広葉樹の自給率は低く、ほとんど海外から輸入されている。
また、針葉樹についても、海外の材料が安いため、最近では日本の針葉樹林が放置され、荒れた里山も増えているそう。

杉

管理された杉と荒れた里山の杉では、こんなにも木目が違ってきます。

最近では、戸建て住宅の需要の低下、植林した杉や檜の使いみちが減り、いままで針葉樹はを使用しなかった家具への利用もはじまっている。
そのままでは使用できないため、圧密することによって、杉を固くしてフローリングや家具などに使用する技術も生まれた。

西川杉

全て西川杉で作った家具

都会に住む人々にとっては、コンクリートの中に住むからこそ、日本の都市に暮らす人にとって木のぬくもりが必要になる。
日本のマンションの場合、壁と天井は壁紙、床は木製フローリング、建具も木製。そして、もちろん家具も。
日本ではモダンの生活の中にも、木を多用した日本独自の住空間になっている。

それだけ、日本人にとって木は親和性が高い。日本では生成り~褐色・茶色といった木材の色が好まれて使用されている。
最後に茶色の特色についてみていきたい。
「茶色」という色を好んで使用する人は少ないが、自分のライフスタイルを見渡すといかに茶色に囲まれて暮らしているか。気づくはず。

茶色の加法混色

加法混色:茶色は、赤と黄色そして黒を混ぜると茶色になる。
赤と黄色はともに暖色ですので、茶色も暖色に含まれる。
そして、黒を含むことで赤の「熱い」というイメージがトーンダウンして、「温かみのある」「ぬくもりを感じる」というイメージになる。

自然界の茶色

  • 大地
  • 枯葉・枯草
  • 砂・土・泥
  • 動物(馬・牛・リス・鳥など)
  • 人間の肌・髪

茶色の素材

  • 木材
  • コルク
  • 馬毛
  • レンガ

茶色の飲食

  • コーヒー
  • ミルクティー
  • ナッツ(くるみ・ピーナッツ・クリなど
  • チョコレート
  • クッキー
  • パン
  • 焼肉・ステーキ
  • 味噌

茶色のポジティブイメージ

  • 温もり
  • 安らぎ
  • 安心感
  • 安定
  • 穏やか
  • 堅実
  • 自然
  • 渋い
  • 重厚
  • 生命
  • 素朴
  • 大地
  • 伝統
  • 保守
  • 力強さ

茶色のネガティブイメージ

  • 退屈
  • 陰気
  • 汚い
  • 臭い
  • 地味
  • 頑固
  • 荒廃

ブラウンマーケティング

茶色を好む人は少ない

○データが少し古い(1998年)が日本人の好む色。

日本:1位 青 2位 白 3位 緑 ・・・9位 茶色

○「好きな色は?」と聞かれて、「茶色」と答える人は少ない。年代的には中高年の好まれる色。

茶色を好む年代多い順
1位 40代 2位 60代 3位 50代 4位 30代 5位 20代 6位 70代

日本人のライフスタイルには欠かせない茶色

しかし、日本人のライフスタイルに茶色は常に存在している。日本人は、木素材を使ったインテリアを好む傾向にあるから。
また、カーテンやジュータンなどのインテリアファブリックにおいてブラウンのシェア率はベージュなどのニュートラル系に続いて常に2位。

ブラウンは自然素材との結びつきが強い、一方で家電や車など人工素材との相性は悪い。
日本では、木製家具の需要が高く、イタリアのモダンデザインよりも北欧系の家具が好まれる。
それは、ヒノキや杉という針葉樹林に囲まれて生活してきた日本人は、木造住宅に暮らしてきて、木のぬくもりに馴染んできたためのよう。
コンクリートで作られたマンションに住んでも、ブラウンのフローリングと木製家具を好むのは日本人ならではの特徴だと思う。

筆者プロフィール:Koike Yusuke
海外の家具メーカーで働く、商品開発エンジニア兼デザイナー。
資格:木造建築士 / カラーコーディネーター1級(商品色彩)/ マーケティング検定
(Twitterはお気軽にフォローください!@yusukekoike21

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